2008-02-08
四半世紀ぶりに小学校の同窓会が開かれ、四十歳近くなったヒロは思い切って恩師にその時のことを尋ねてみる。もしかすると自分が熱を出して見た夢なのかも知れないけれど、と前置きして、宝箱と金曜日に悩み続けたその1週間の話をする。横で話を聞いていたクラスメートたちは皆ぽかんとして「何のことだ?」とさっぱり要領をえない。やはり夢だったのかと思ったところで恩師が呟く。
「なんて言ったんだっけ? 『ぜんじつまでにあつめたからばこときんようびにいえからもってきたようきをつかって……』」
「ほら!」
「何が」
「前日までに集めた宝箱と金曜日に、って」
「えっ?」そして恩師が笑う。「宝箱じゃない。から箱だよ、前日の木曜日までに集めた“から箱”と、金曜日に家から持ってきた容器だよ」
どっと笑いが起き、ヒロは頭をかく。長年の謎が氷解してほっとする気もするが、どことなく釈然としない心地も残る。それからしばらくすると再び、疑念が頭をもたげる。本当はどうだったんだろう? ぼくのいない工作の時間、みんなは宝箱と金曜日を持ち寄っていたんじゃなかろうか。そしていまとなっては、そうであった方が自分にはしっくりくることにヒロは驚いたり納得したりする。
(「宝箱と金曜日」ordered by 巻巻-san/text by TAKASHINA, Tsunehiro a.k.a.hiro)
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