2008-01-02
「その通りです。ありがとうございます、ユーゴさん」女探偵はその場でくるりと綺麗なターンをして画面に向かって言う。「最初これがなかなかわかりませんでした。ダイイング・メッセージなのかどうかすらわかりませんでした。ただ書きかけの途中で殺されたんじゃないかとも思いました。でも違う。これはやはりダイイング・メッセージです」
わたしは沈黙して様子を見ている。女探偵が本当に正しい結論に達したのかどうか見極めるためだ。でも彼女は正しいと言うことがわかる。彼女は画面に指を突きつけ、つまりパソコン画面の中からわたしを指さし、はっきりと言うからだ。「あなたが犯人です。作家を殺したのはあなたに他なりません。なぜならこの話はあなたが書いたからです。急募『お題』を求む! これはあなたのお得意のフレーズです。しかも言わせてもらえば殺された作家はあなたの分身でしょう?」
そこでわたしは書き込む。
「そんなことを言ったら君だってぼくの分身だ」
「もちろんです」女探偵は言う。「アンナもマリエもジローもナオミもユーゴもね。こんな海外でも日本でもありうる名前ばかりそろえるなんて不自然なことはフィクションだから許されることです」
「では、君はこの事件をどう終えるつもりかね」好奇心に駆られて私は尋ねる。「どう解決して終わらせるんだ?」
「ご冗談でしょう」女探偵は言う。「それはこちらのセリフです。あなたこそこの話をどう終えるつもりなんですか? ご自分を登場なんかさせてしまって」
確かに。それはそうだ。この話を終えるのはわたしの仕事だ。だからわたしはこの話をこう書き終えよう。何者かがわたしの背後から迫ってくる。しかしこれだけは書いておかなければならない。急募!『お題』
(「急募!「お題」」ordered by futo-san/text by TAKASHINA, Tsunehiro a.k.a.hiro)
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