2007-12-15
小説の創造に必要なのは閃きだけではない。まず習慣として書き続ける能力が絶対的に必要だ。ぱっと書いてもう終わり、などもってのほかだ。それだけではない。構想力、構成力、そして粘り強すぎるくらい粘り強い推敲に耐えられるだけの忍耐力が必要だ。ものすごいスピードとは何ごとだ。単なる忍耐力のなさの表れではないか。おそらくその者達は「生え抜き」と「生粋」で悩むことなどないだろう。ましてや「たたき上げ」に変えることで全面的な書き直しをするかどうかについて頭を使う努力など思いつくことさえできないに違いない。いやいや。それどころか「生え抜き」と「たたき上げ」の違いだって知らない可能性がある。出版社も出版社だ。何を考えてぐちぐちと泣き言を言っているのだ。わたしをそんな者どもと一緒にされては困る。わたしには矜持がある。なぜならわたしは文芸誌に認められ文芸誌とともに育った生え抜きの作家だからだ。
* * *
そこまで書いて作家は万年筆を止める。いやここは生粋の作家とすべきだろうか。むしろたたき上げの作家とした方が、地に足のついた作家の誇りのようなものを強く表現できるのではないだろうか。
そして作家はマントを羽織ると誰にも声をかけずむっつりした顔で外出する。(冒頭に戻る)
(「生え抜き」ordered by カリン-san/text by TAKASHINA, Tsunehiro a.k.a.hiro)
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